半地下備忘録

たつさんの日記的ななにか。

課題を乗り越える度にまた食糧不足に 『食糧と人類 飢餓を克服した大増産の文明史』

どうやって人類が食糧生産を増やしていったか。課題をひとつ乗り越える度にまた人口が増加して、食糧不足という問題が繰り返される。

地球の誕生から始まり、人類は狩猟生活から農耕生活へ。痩せていく土壌にどうやって、植物が育つのに必要な栄養素を補うか。特に窒素とリンが重要で、初期にはクローバーや動物の骨、屎尿などが使われていた。

土の中の栄養問題をクリアすると次は労働力の問題が立ちふさがるが、動物の力を農作業に使うことで乗り切った。家畜は労働力としてだけでなく、糞まで肥やしとして役立った。

人口増加にともなう食糧不足が再来する。その頃発見されたのがグアノという鳥の糞。窒素とリンが豊富に含まれていて、肥料として重宝される。南米からヨーロッパや北米に輸出され、これを買う資金さえあれば土壌の養分の問題はひとまず解決した。当時はグアノをめぐって戦争すら起こったほどだが、50年後にはすっかり取り尽くされ、その後は硝石に移る。

肥料の話だけでもこんなに移り変わりがある。このほかにもトピックスとして、水、品種改良、石炭・石油をエネルギー源とした窒素、リンの生産や採掘、殺虫剤の登場、遺伝子組み換え、新しい問題(肥満、品種改良に使われていた野生種の絶滅)――など。

飢餓は未だに解決されてなくて、さらに肥満という新しい問題まで。この1冊で地球の誕生から現代に至るまでの食糧と人類の歴史の全体が概観できる。