- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/11/18
- メディア: 文庫
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今まで何冊か読んできている石田衣良のエッセイ集。
この本の中で気に入ったお話があったので引用。
これは書籍や映画や音楽のような文化でもまったく変わらない。無数の作品が生みだされているのに、話題になったベストセラーにしか関心をもたない。流行現象の消費者としてしか作品を選べない人が増えている。
確かに競争が激化して、社会が失敗を許さなくなってきていのは理解できる。瞬時のためらいも、たのしい寄り道も、冷たくムダとして切り捨てられる。そんな世の中で生きていたら、誰だって失敗したくはないだろう。だから、自分の目を信じずに評判のものだけを選ぶ。数十万、数百万の人に支持された。ならばきっといいものに違いないという反応だって無理はないかもしれない。
「でも」、それだけではいけないのだ。誰もが同じものを見て、読んで、きいている。あるいは同じような意見や政治信条しかもたない。そんな世界は貧しい世界である。しかもその方法では、よりよく生きることだって困難なのだ。
考えてみてほしい。安全に最大多数の選択ばかり続けていたら、いつまでたっても膨大な数の集団といっしょにいることになる。そのなかから抜け出すには、たいへんな労力が必要になるだろう。成功は安全のむこう側、リスクを冒してなにかオリジナルのアイディアを実現した人のものなのだから。
そこで、新しい一年はみんなに「でも」を大切にしてもらいたい。時代はむきだしの本音の時代になってしまった。「でも」そんな大多数の冷酷な本音に、ちいさな声でやわらかに、ひとりで反対してほしいのだ。流されてばかりではいけない。単独に鳴ることを恐れてもいけない。
最大多数の選択ばかりにならないように気をつけないと。「みんなが選んでる」ってのは、みんなもみんなが選んでるって理由だったりして、面白くなかったり、似たようなものばっかりになるし。
最近は最大公約数的なものばっかりを追いかけても、自分が楽しめないと意味ないよねってことをだんだんわかってきた。楽しんだら勝ち。前から思ってるけど、この引用部分を読んで改めて思った。
なんでも否定から入る「でも」ではなくて、ちょっとだけ疑ってみたりする「でも」。自分らしさのための「でも」を持ち続けられますように。
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